1.個人再生とは
個人再生とは、通常の再生手続の特則として認められている手続で、5000万円以下の負債を抱える個
人で、将来、継続的または反復して収入を得る見込みのある者につき、裁判所の認可決定により、元本を
大幅にカットして返済することを認める手続です。
個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生があり、また、住宅ローンが存在するような場合に
は、それぞれにつき、住宅資金特別条項をつけることができます。
2.個人再生の流れ
(1) 弁護士が受任通知書を発送し、各債権者から取引履歴が送られてきた後、その取引履歴につい
て、引直計算をするところまでは、任意整理・破産と同様です。その後、引直計算によって、最終的
な負債額が確定した後、その金額全額を返済することは困難だが、大幅に減額すれば返済が可能
であると判断した場合に、個人再生の申立てをします。
(2) その後、東京地裁本庁の場合、申立日に、裁判所から個人再生委員が選任され、後日、申立人
及び申立人代理人が個人再生委員と面談をします。 その面談により、個人再生委員が、再生手続
開始が相当であるとの意見を出した場合には、裁判所が、再生手続開始決定を下し、再生手続が
進行するこになります。
(3) 再生手続開始決定から約1月後が各債権者の債権届出期限となっておりますので、その期限ま
でに各債権者がそれぞれ考える債権額を届け出ます。仮に債権者が債権届出をしなかった場合に
は、申立人代理人が申立書に記載した債権額が再生債権として扱われます。
(4) 債権者が届け出た債権額に争いがない場合或いは債権者が債権届出をしなかった場合には、債
権届出期限から約2月後に、申立人代理人が再生計画案を提出し、その後書面決議或いは債権者
の意見聴取を経て、認可・不認可の決定が下され、確定により手続は全て終了します。
(5) 債権者が届け出た債権額に争いがある場合には、申立人代理人が異議を述べ、その異議に対し
て、債権者が更に争う場合には、債権者が再生債権の評価申立てを起こしてきます。この場合に
は、再生委員の意見書をもとに裁判所が債権額を確定することになります。その後の流れは上記
(4)と同じです。
(6) 標準スケジュールによりますと、申立てから25週間程度で終了することが多いです。
(7) 弁護士費用を除いた裁判にかかる費用ですが、東京地裁の場合、申立て時に、手続費用として
金2万3528円(収入印紙代1万円、裁判所予納金1万1928円、予納郵券代金1600円)がかかり
ます。 また、申立て後1週間以内の日を第1回として、以後、毎月1回、期間は約6月間、再生委員
の口座に、分割予納金として、計画弁済予定額を振り込みます。計画弁済予定額は、認可決定後返
済していく予定の毎月の返済額とほぼ同額です。
詳細は→Q&A(個人再生)へ
Q&A(個人再生)
1.どういう場合に個人再生を選択するのでしょうか。
破産はしたくないが、任意整理では金額があまり減らず返済していくことができない場合、警備員など
の職業制限のある職業についており破産はできない場合、債務整理をしたいが、住宅ローンがあり住宅
は手放したくない場合(住宅資金特別条項付のケース)などの場合に、個人再生を選択する意味があり
ます。
2.個人再生をするとどういう不利益・不都合が生じますか。
(1) 全情連・CIC・KSCといった信用情報機関に登録され(いわゆるブラックリスト)、5〜7年は、クレジ
ットカードの利用や新たな借入れができなくなり点は任意整理・破産と同じです。
(2) 再生手続開始決定時、書面決議に付する旨・意見を聞く旨の決定時、再生計画の認可決定時の
3回、官報に氏名が掲載されます。
(3)保証人がついている場合には、保証人に対して、請求がなされることになります。
3.認可決定後の弁済額は幾らなのでしょうか。
個人再生の場合、幾ら返済するかについては、複数の基準があり、これらを下回らないことが要件と
なっております。
(1) 最低弁済基準(民事再生法231条2項3号、同項4号)
ア 基準債権総額が100万円未満の場合〜基準債権の総額
イ 100万円以上500万円未満の場合〜100万円
ウ 500万円以上1500万円以下の場合〜基準債権総額の2割相当額
エ 1500万円超3000万円以下の場合〜300万円
オ 3000万円超5000万円以下の場合〜基準債権総額の1割相当額
(2) 精算価値保障基準(民事再生法230条、174条2項4号、241条2項2号)
破産手続がなされた場合に、債権者に分配される総額のことを精算価値と言い、個人再生の場合
には、この精算価値を下回る弁済額は認められておりません。
(3) 可処分所得基準
2年分の可処分所得を算出し、この2年分の可処分所得以上の弁済をしなければならないという
基準です。可処分所得とは、再生計画提出前の2年間の再生債務者の総収入から税金・社会
保険料を引いたものを2で割った額から申立人及びその被扶養者の1年分の生活費を控除した
残りをいいます。1年分の生活費の算出基準については、政令で定められております
(民事再生法241条3項)。
※ 小規模個人再生の場合には、(1)、(2)のうち金額の高い額が、給与所得者等再生手続の場合
には、(1)〜(3)のうち最も金額の高い額が計画弁済額となります。
4.何年で返済していくのでしょうか。
原則3年ですが、特段の事情がある場合には5年を超えない期間とすることができます。
5.認可決定後の弁済は、いつから始まりますか。
再生計画の認可決定が確定した日の属する月の翌月からとなります。認可決定の確定日は、官報
掲載から2週間後となっております。通常の流れは、認可決定が出てから概ね2週間後に官報に掲載
され、更にその2週間後に確定しますので、その翌月から弁済を開始していくことになります。
6.法人も利用できるのでしょうか。
できません。法人の場合には通常の民事再生手続になります。
7.負債額が5000万円を超える場合にも利用できるのでしょうか。
できません。この場合も、通常の民事再生手続になります。
8.認可決定が下りた場合、税金や社会保険料(健康保険料・国民年金保険料)も減額されま
すか。
減額されません。
税金や社会保険料については、権利変更の対象にはならないとされております(民事再生法
122条1項、2項)。
9.小規模個人再生と給与所得者等再生とはどう違うのでしょうか。
(1) 給与所得者等再生を利用する場合には、給与その他これに類する定期的な収入を得る見込みが
あって、かつその額の変動の幅が小さいことが必要ですので(民事再生法221条1項)、この要件を
満たさない場合には、小規模個人再生しか利用できません。
(2) 小規模個人再生においては、債権者の過半数の消極的同意が必要ですが、給与所得者等再生
の場合には、債権者の意見聴取のみで足ります。
(3) 小規模個人再生の場合には、計画弁済額が、最低弁済基準及び精算価値基準の双方を満たせ
ば足りますが、給与所得者等再生の場合には、これらのほか可処分所得基準も満たす必要があり
ます。
(4) 給与所得者等再生の場合には、再度の利用制限が課せられていたり(民事再生法239条5項2
号)や破産における免責不許可事由(破産法252条1項10号)とされておりますが、小規模個人再
生の場合には、そのようなことはありません。
なお、東京地裁本庁における個人再生の利用状況ですが、概ね8割程度が小規模個人再生の利
用です。これは給与所得者等再生の可処分所得基準が厳しいのが一つの理由です。
10.小規模個人再生において、債権者の過半数の同意は得られるのでしょうか。
債権者が銀行、消費者金融、信販会社などである場合、同意が得られることが多いです。
これは、債権者としては、不同意にした結果、個人再生が認められず、最終的に破産となった場合
には、全く返済されない可能性があり、そのような結果になるのであれば減額したとしても返済して
もらったほうが良いからです。但し、鞄本政策金融公庫(旧国民生活金融公庫)等の政府系
金融機関の場合には、不同意意見を出してくることが多いです。
11.個人再生の申立てをした場合、債権者は訴訟を提起したり、強制執行したりできるの
でしょうか。
訴訟に関しては、債権者は訴訟提起することは可能です(民事再生法238条1項により同法40条
の準用無)。理論的に言いますと、個人再生の場合には、通常再生と異なり、債権調査手続きの結果
に再生債権の実体的確定効が付与されていないため、訴訟手続きの中断効を発生させることができ
ないからです。強制執行に関しては、再生手続開始決定により、以後、強制執行を申し立てることは
できず、現在進行している強制執行は中止されます(民事再生法39条1項)。
12.再生債権について、いつの時点までの利息がつくことが多いのでしょうか。
当事務所では、原則として、引直計算後の最終取引日時点での金額を債権額として申立てをします
が、その後の債権者による債権届出では、再生手続開始決定前までの利息をつけてくることがありま
す。
法律上は、再生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権(民事再生法84条1項)のほ
か、再生手続開始後に発生する請求権であるが元本に附帯する請求権も再生債権として扱われてい
るため(同条2項)、法律上は、再生手続開始決定後の利息も含めることは可能ですが、一般的には、
再生手続開始決定時までの利息をつけて債権額を届け出ることが多いです。
この場合、こちらが異議を出さなければ、債権者の届け出た債権額で再生債権が確定されます。
異議を出した場合には、その後、債権者が評価申立ての手続を取らなければ、こちらが申し立てた
債権額で確定され、債権者が評価申立ての手続を取った場合には、最終的には、裁判所が決定した
金額が再生債権となります。
13.自分が主債務者となっている負債のほか保証人となっている負債についても申し立てる
必要があるのでしょうか。
あります。
自分が債務者になっている負債については、全て申立ての対象となります。具体的には、主債務
のほか連帯債務、連帯保証などです。
14.自分が保証人となっている負債について、主債務者は約定に従って返済を続けているの
ですが、自分が個人再生を申し立てることによって主債務者に影響が生じますか。
どのような金銭消費貸借契約を締結しているかによります。保証人が個人再生の申立てをしたことが
契約上の期限の喪失事由に該当する場合には、債権者は主債務者に対して、一括請求することが
できます。ただ、実際には、主債務者が約定の返済を続けている限り、一括請求をしてこないことも
あります。この場合、再生計画案については、再生計画案提出時の残債務額に基づいて提出します
が、この再生計画案は主債務者の返済には影響を及ぼしませんので、あくまで主債務者は約定に
従った返済を続けていくことになります。この場合の同債務についての再生計画案はあくまで書面上の
ものであり、主債務者が約定の返済を続けている限り、実際上は同債務について申立人が再生計画案
に基づく返済をする必要はないものと思われます。
15.小規模個人再生において、再生計画案が不認可となった場合、どうなるのでしょうか。
申立人が自己破産を望む場合には職権破産に移行します。自己破産を望まない場合には、
給与所得者等再生或いは任意整理を選択することになります。
16.小規模個人再生において、再生計画に従った返済が困難となった場合には、再生計画
を変更することはできるのでしょうか。
できます。
具体的には、再生計画認可後やむを得ない事由で再生計画の遂行が著しく困難となった場合
には、2年を超えない範囲で返済期間を延長することができます(民事再生法234条1項)。例えば
リストラにより収入が途絶えた場合や給料が大幅に減少した場合などには利用できる可能性があります。
17.ハードシップ免責とは何ですか。
再生計画の遂行が極めて困難となった場合において、残債務の支払いを免除されることを言い
ます。具体的には、@再生計画の遂行が極めて困難であること、A各再生債権につき4分の3以上
の弁済を終えていること、B再生債権者の一般の利益に反するものでないこと(清算価値保障原則
に反しないこと)、C再生計画の変更も極めて困難であることといった要件を具備する場合には、
ハードシップ免責が認められます(民事再生法235条)。
18.住宅資金特別条項とは何ですか。
住宅ローンが存在する場合、その住宅を保持しながら返済を続けていくという制度です。
具体的には、住宅ローンについては、減額することなく、そのまま返済を続けていき(返済方法が変わ
ることはあります。)、その他の債権について、上記の基準に従って減額させ、原則3年で返済をしてい
きます。この場合、申立てに際して、裁判所に、住宅資金特別条項を利用する旨の報告書を提出
します。また、再生手続開始決定後も従前どおり住宅ローンの支払いを続ける場合には、弁済許可
申請書を提出する必要があります。
19.どういう場合に住宅資金特別条項を利用できますか。
一般的に言いますと、住宅ローンを返済している場合に、住宅資金特別条項を利用できますが、厳密
には、住宅ローンの対象となる建物、敷地及び貸付債権について、法律の定める要件を満たす必要が
あります。以下、具体的にご説明いたします。
(1) まず、建物については、居住用の建物でなければなりません。正確には、「個人である再生債務
者が所有し、自己の居住の用に供する建物」であり、「その床面積の2分の1以上に相当する部分
が専ら自己の居住の用に供されるもの」である必要があります。また、居住用建物が2以上ある場
合には、主として居住用の建物として利用する建物に限られます(民事再生法196条1号)。
(2) 敷地については、「住宅の用に供されている土地又は当該土地に設定されている地上権」でなけ
ればなりません(同法196条2号)。
(3) 債権については、住宅資金貸付債権にあたる必要があります。
正確には、「住宅の建設若しくは購入に必要な資金又は住宅の改良に必要な資金の貸付に係る
分割払いの定めのある再生債権であって、当該債権又は当該債権に係る債務の保証人の主たる
債務者に対する求償権を担保するための抵当権が住宅に設定されているもの」でなければなり
ません(同法196条3号)。要するに、住宅の建設等のために借り入れをしたものであって、分割
払いとなっていなければならないということです。
また、求償権ですが、住宅ローンを組んだ場合、保証会社と保証委託契約を締結することがあり、
この場合、債務者が返済を怠った場合には、保証会社が代位弁済をすることになり、保証会社
が代位弁済をした場合には、保証会社は債務者に求償することができるのですが、この求償権を
担保するために抵当権を設定した場合も住宅資金貸付債権にあたります。
20.住宅資金特別条項にはどのような類型がありますか。
(1) 期限の利益回復型(民事再生法199条1項)
一般弁済期間(住宅資金貸付債権以外の再生債権についての再生計画上の弁済期間。
3〜5年)中に、遅滞していた元本及び利息並びに損害金を支払い、一般弁済期間後は
当初の約定に従って返済を続けていく類型です。
(2) 最終弁済期延長型(同条2項)
変更後の最終弁済期が当初の約定最終弁済期から10年を超えず、かつ変更後の
最終弁済期における再生債務者の年齢が70歳を超えない範囲で最終弁済期を延長
できる類型です。
(3) 元本据置型(同条3項)
一般弁済期間の範囲内の期間(元本猶予期間)について、元本の一部及び元本に対する
最終元本猶予期間中の住宅約定利息のみを支払う類型です。最終弁済期延長型との違いは、
最終弁済期延長型の場合には、一般弁済期間において、元本の一部猶予が無いのに対して、
この類型の場合には、元本が一部猶予されるという点です。
変更後の最終弁済期が当初の約定最終弁済期から10年を超えず、かつ変更後の最終
弁済期における再生債務者の年齢が70歳を超えない範囲で最終弁済期を延長できる
という点は同じです。
(4) 同意型(同条4項)
住宅資金貸付債権者と再生債務者の協議により住宅資金特別条項の内容を定める類型です。
(5) そのまま型
住宅ローンについて延滞がない場合に、 再生手続申立て後も約定の定めに従って返済を
続けていく類型です。直接の規定はありませんが、期限の利益回復型の1形態と考えられて
おります。実際にはこの類型を用いることが多いです。
なお、当事務所は上記5類型のうちいずれにも対応しております。
21.住宅に、住宅ローンとは関係の無い債権(生活費のため消費者金融から借り入れをした場合
の消費者金融の債権等)について、抵当権その他担保権が設定されている場合にも住宅資金
特別条項を設けることはできますか。
できません(民事再生法198条1項但書前段)。
個人再生においても、担保権者は別除権者として別除権を行使することができ、そうすると再生計画
で住宅資金特別条項を定めたとしても、別除権の行使により住宅の処分が可能となり、住宅資金特別
条項が無に帰するからです。
22.投資用の物件については、住宅資金特別条項を利用できますか。
できません。上記で述べましたように、居住用の物件にあたらないからです。
23.住宅資金特別条項を利用した場合にも、債権者は債務者の遅滞等について、保証人の
法的責任を追及することはできるのでしょうか。
追及することはできません。本来、個人再生の手続を取ったとしても、債権者が保証人の責任を
追及することは可能なのですが(民事再生法117条2項)、住宅資金特別条項を利用した場合には、
債務者が住宅資金特別条項に沿った返済を続けている限り、保証人は責任を追及されません(同法
203条1項)。
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