Q&A
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1.どういう場合に、自己破産するのでしょうか。
収入・資産が無く、返済が不可能な場合、或いは収入・資産があっても返済するに足りないなどの場合に自己破産の手続を取ります。
2.自己破産できるか否かの基準はあるのですか。
法律上の基準ではありませんが、一つの目安として使われている基準として、 (毎月の収入-住宅費)÷3×36回(3年)< 負債総額である場合には、自己破産できるとされております。 この基準は、毎月の収入から住宅費を引いた額の3分の1程度は負債の返済に充てられるであろうということ及びその金額を3年間程度であれば返済し続けられるであろうという考えに基づいております。
3.負債額が100万円以下でも自己破産できますか。
一概に言えませんが、負債額があまり少額の場合、支払不能と認定されない可能性があります。負債額が100万円以下の場合でも、上記基準に照らして、返済困難という場合には、自己破産が認められる可能性があります。なお、当事務所では、150万円程度の負債額につき、自己破産が認められたことがあります。
4.預貯金・自動車などの財産は処分しなければならないのでしょうか。
基本的に財産は処分することになります。但し、預貯金や生命保険解約返戻金などが20万円以下の場合や自動車その他の財産の価格が20万円以下の場合には処分する必要はありません。
5.自己破産をするとどういう不利益・不都合が生じますか。
- 全情連・CIC・KSCといった信用情報機関に登録され(いわゆるブラックリスト)、5~7年は、クレジットカードの利用や新たな借入れができなくなり点は任意整理と同じです。
- 破産手続開始決定時及び免責許可決定時の2回、官報に氏名が掲載されます。
- 破産手続開始決定から免責許可決定が出るまでの間、警備員、保険外交員などの一定の職業には就けません。
- 保証人がついている場合には、保証人に対して、請求がなされることになります。
6.自己破産には、同時廃止と少額管財の二つが存在するのですか。
そうです。同時廃止とは、処分する財産もなく、管財人による調査等も不要な場合に取られる手続きで破産手続開始決定と同時に破産手続廃止の決定が下されます。手続は簡便で、少額管財と比べて期間も短く、費用も低廉で済みます。
少額管財とは、処分する財産がある場合や浪費している可能性がある等免責不許可事由が認められる場合に、裁判所が管財人を選任し、管財人が財産調査、裁量免責の可否の調査などを行う制度です。同時廃止と比べて期間が長くなることもあり、費用も、引継予納金20万円を支払う必要があるなど、同時廃止よりかかります。
どちらを選択するかについては、少額管財に当たる場合には、同時廃止を選択することはできませんので、少額管財に当たるか否かが重要になります。
7.どういう場合に少額管財となるのでしょうか。
- 33万円以上の現金がある場合
- 20万円以上の換価対象財産がある場合
- 所有不動産に設定されている抵当権の被担保債権が所有不動産の時価の1.5倍未満の場合
- 免責不許可事由が認められ、管財人が裁量免責の可否を調査する必要がある場合
- 負債額が5000万円以上の場合、債権者が多数に上る場合
- 法人併存型の場合
8.不動産を保有している場合、少額管財になりますか。
原則として、少額管財になります。しかしながら、不動産につき、ローンが残っており、その残高が、自己破産申立時の不動産の評価額の1.5倍以上である場合には、同時廃止とすることができます。この場合、当該不動産の登記簿謄本、ローンの残高証明書、査定書等を提出します。
9.いかなる事由が免責不許可事由になるのでしょうか。
この点は、破産法に規定されております(以下、破産法252条1項1号~同項11号)。
- 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
- 破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
- 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
- 浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
- 破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
- 業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
- 虚偽の債権者名簿(第248条5項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条1項6号において同じ。)を提出したこと。
- 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
- 不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
- 次のアからウまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。
ア 免責許可の決定が確定したこと→当該免責許可の決定の確定の日
イ 民事再生法(平成11年法律第225号)第239条1項に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと→当該再生計画認可の決定の確定の日
ウ 民事再生法第235条1項(同法第244条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと→当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
- 第40条1項1号(説明義務)、第41条(重要財産開示義務)又は第250条2項(裁判所・管財人による調査への協力義務)に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。
10.免責不許可事由がある場合には、絶対に免責されないのでしょうか。
免責されることもあります。
上記各事由がある場合にも、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは免責を許可できるとされております。(破産法252条2項)
11.一度、免責許可決定を取得した場合、二度と破産できないのでしょうか。
7年後でないと破産申立てはできません(上記9.(10))。
12.会社経営者なのですが、会社の負債のみならず、個人でも負債を抱えている場合、会社と個人双方について破産申立てをするのでしょうか。
会社と個人双方につき負債が存在する場合、双方について破産申立てをすることになります。会社経営者の場合、個人保証をしている場合が多く、負債額が会社と個人で変わらないことも多く、その場合、会社・個人双方とも支払不能となっていることが多いからです。もっとも、個人のみが負債を抱え、会社は負債をほとんど抱えていない場合などの例外的な場合には、片方のみ破産申立てをすることもあります。
13.自己破産の申立てをした場合、債権者は訴訟を提起したり、強制執行したりできるのでしょうか。
原則としてできません。
破産の場合には、破産手続開始決定により、 破産財団に関する訴訟手続は中断し(破産法44条1項)、破産財団に対する強制執行等の個別的権利行使は禁止され、破産者の財産に対して既になされている破産債権に基づく強制執行は失効する(同法42条1項、同条2項)とされております。債権者が訴訟を提起したとしても中断してしまいます。
14.債権者から破産申立てをできるのでしょうか。
できます。
債権者が、債務者が財産を保有していると判断した場合には、その換価を狙って破産申立てをすることがあります。
15.自己破産すると、税金や社会保険料(健康保険料・国民年金保険料)も免責されますか。
免責されません。税金や社会保険料は非免責債権とされております(破産法253条1項1号、97条4号)。
16.知人が保証人となっておりますが、自己破産によって、保証人の負担も減りますか。
減りません(破産法253条2項)。保証人だけでなく、自宅を担保として提供している物上保証人の負担も減りません。
17.現金はいくらまでであれば保有できますか。
東京地裁では、99万円までであれば自由財産として手元に残せます。ただし、現金33万円以上を保有しているので、管財人がつくことになります。
代表 弁護士 山川典孝
第二東京弁護士会所属
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